読書日誌:社会的共通資本
読了日:2011/05/09
書名:社会的共通資本
著者:宇沢弘文
出版年:2000年
出版社:岩波新書
コメント:
著者の古典的名著「自動車の社会的費用」の思想をさらに農の営み(林業・漁業を含む)や都市環境、教育、医療、金融、地球環境問題などに敷衍、整理して論じた書。経済学者としての立場から説く著者の主張は、1970~80年代の新自由主義や、本書発刊以降さらに猛威をふるった倫理なきマネー資本主義に立ち向かう、決然たるアンチテーゼとなっている。著者のこの強い姿勢は、82歳にしてTPP反対の論陣の先頭に立つ、現在の彼の姿勢にもつながっているのだろう。
医療についても1章を割いているのだが、わずか14ページしかなく、とても物足りない。だが、著者が唱える「医療制度の静学的・動学的分析」という発想はたしかに有用そうだ。また、著者が「日本の医療制度の矛盾を一言でいってしまえば、それは、医療的最適性と経営的最適性の乖離ということではなかろうか」というのは、まことにその通りで、おいらが関わっているDPC/PDPSでも、各病院が経営的最適性に引きずられ、医療的最適性を損なう傾向が強まっているように見受けられる。情けないことだ。
あと、致し方のないことではあるが、本書はもともと著者の多くの論文の寄せ集めで、テーマも広範にわたっているので、一冊の本として見ると、どうしても散漫な印象を受ける。
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